散華の麗人
ひと呼吸おいて、話を続ける。
「これは、あくまでも俺の予想だが、現国王……細川秀尚と細川陸長が手を組み、企んでいる。そして、貴様の理想である国ではなく別の形の国をつくろうとしている。」
「陸長も……?」
「そうだ。寧ろ、秀尚よりも貴様に対して不満を募らせているだろう。」
「……」
(確かに、そう考えるのが当然だ。)
一正は景之の言葉に顔を顰めた。
「現国王の理想と貴様の理想が違うことは知っている。」
「せやけど、わしは」
「“皆が笑える国にしたい”……そうだろう?」
そう言った景之の表情が少し優しげになった気がした。
(ゆきちゃん……)
良寧は景之を見る。
「結構。」
景之は吐き捨てるような口調で言う。
何処か悲しげに一瞬だけ睫毛を伏せたが、直ぐに無表情へ変わる。
「愚かな夢だ。」
「何やと」
「その身体で何が出来る?」
「な……」
「病に冒され、立場は日に日に悪くなる。このままでは、現国王に謀殺され兼ねんな。」
「――っ!」
一正は奥歯を噛み締め、景之を睨む。
「皆が笑うなどと、寝言は寝て言え。」
景之は淡々と言う。
「人間は愚かな生き物だ。私利私欲の為に他人を陥れ、邪魔者は徹底排除しようとする。自分の正義を貫く為にそれに反するものを殺す。救い難き生き物だ。」
その言葉を聞いた風麗の脳裏に母親が過る。
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