散華の麗人
国に殺された存在。
景之の言葉に怒りよりも理解する心が先行する。
それを振り払うように、風麗は景之を睨む。
「誰かの幸福は誰かの不幸だ。1人を生かすには10人を犠牲にすることさえある。……全員が笑う?馬鹿を言え。いつか、全員を殺す事になる。」
景之はその視線を受けて平然としている。
この場の全員が景之へ怒りを込めた視線を向ける。
そのことに対して、景之は変わらぬ態度をとる。
「警告しておく。貴様の理想は叶わぬ。そして、叶えようとすれば犠牲が伴う。」
そう告げる視線は真っ直ぐだ。
一正は目を逸らさない。
「それでも……未だ、世迷い事を抜かすのなら。」
彼は引き下がらないと悟っておきながら、景之は言う。
「――貴様は愚かな人間だということだ。」
その一言に風麗は掴みかかろうとする。
雅之は視線で牽制した。
(この場で騒ぐと面倒だ。)
そう視線で言ったのが伝わったのか、風麗は下がる。
「貴様らは、この愚か者の味方なのだな。狂信者とでも言っておこう。」
自身へ向けられる敵意に景之はそう言う。
(慕われている、か。)
反面で何処か安堵しているようにも見えたのは良寧だけだろう。
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