散華の麗人
ぽつりと雨が落ちる。
「言うべきことは告げた。」
景之は踵を返す。
「良寧。その小姓と共にその城に留まると良い。貴様らならば、特に怪しまれもしないだろう。俺は、日を改めて報告に戻る。……このような格好では示しが付かない故な。」
言うが早いか馬に跨り門を出た。
「ちょっと、ゆきちゃ……って、もう行ってしまいました。」
「誰が小姓だ!おれは認めてねぇ!!」
困る良寧と喚く辻丸の言葉は届いていないだろう。
「こういう、自分の意見に対して有無を言わせないところ……似とるわぁ。」
一正は雅之を見る。
「部屋に戻るぞ。」
雅之はそれを無視して部屋へ促した。
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