散華の麗人
部屋に入ると、良寧と辻丸は侍女に案内されて客間に入った。
辻丸は納得が言ってない顔になる。
「おれはどうしていっつも、ガキ扱いされるのだ。」
「まあまあ、年齢が子供ですし。」
辻丸を良寧が宥める。
「そんなことを言ったら、あいつだって外見が子供だぞ!」
「そういうところが、子供だ。」
雅之はすっぱり言い切る。
「何をー!!」
「まあまあ。」
怒る辻丸に風麗と一正は声を揃えて宥めた。
「それにしても」
風麗は外を見る。
侍女や家臣は居ない。
人払いをしたというわけではないが、自然とそうなったようだ。
「態々、忠告しに馬を走らせてくるなんて……」
(余程の事情か?)
景之の行動に疑問を持ち、首を傾げる。
「それは、わしも思った。秀尚に報告しに行った後でもえぇんとちゃうか?」
一正は良寧を見る。
「私もそう思います。」
良寧も同じことを考えているようだ。
「そうだな。確かに。本城に行ってから、こっちに来る方が馬を無駄に走らせずに済む。……裏から入るとなると途中で迂回しなければならない分、遠回りなはずだ。」
辻丸は首を傾げる。
「秀尚と話す前にわしと話をしたかった理由でもあったんやろか。」
「もしかすると、戸尾黨和率いる軍が外の農民にも危害を加えたということを知っているのが……陸羽派以外で、彼だけなのでは?」
「それを、伝える為か。確かに、あいつらなら事情を知ったひとには口止めをするはずやな。」
風麗の言葉に一正が納得した顔をした。
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