散華の麗人
辻丸は思案する。
「何か、ひっかかるんだよなぁ。」
家臣相手ならばさておき、柚木相手にあんな言い方をするのがおかしいと思った。
確かに、柚木家と八倉家では八倉家の方が権力はある。
しかし、だからといって柚木を蔑ろには出来ないはずだ。
特に今は。
(解ってない筈はないんだが。)
馬を走らせた彼の表情はあの時見えなかった。
どうしてだか、今にして思えば笑っていたように思えるのだ。
“俺の身体とて、いつまで持つか解らぬ”と言ったその意味。
辻丸は“黄龍殺し”の刀を見る。
「ん?」
雅之がそれを不思議そうに見た。
「それは、当主の物ではないか?」
「そうだけど……何で知ってるんだ?」
辻丸は首を傾げる。
「滅多に人目には晒しませんのに。」
良寧も不思議そうだ。
「……そのようなものを必要とするのは、黄龍を殺すものだけだ。」
その言葉は、秘薬の研究をしていた八倉家の行いを知ってのことだと解る。
「それに、1度見たことがあった。幼い頃だったが。」
当主と初めて会った時だったか。
その懐に刀をしまうのを見た。
“美しい刀だ”と思った。
黄龍殺しの刃だと知るまでは。
「貴様が持っているということは……研究に参加しているのか?」
「まさか。」
辻丸は嘲笑うように否定する。
「秘薬だとかいって、化け物を作ろうとしているだけじゃないか。あんな研究があるから、黄龍……闇夜の一族は滅びた。」
悲しい争い。
私利私欲の為の搾取。
辻丸はそれを快く思っていない。
「ふ、」
(そうだな、そういう奴だ。)
雅之は笑う。
「何か、ひっかかるんだよなぁ。」
家臣相手ならばさておき、柚木相手にあんな言い方をするのがおかしいと思った。
確かに、柚木家と八倉家では八倉家の方が権力はある。
しかし、だからといって柚木を蔑ろには出来ないはずだ。
特に今は。
(解ってない筈はないんだが。)
馬を走らせた彼の表情はあの時見えなかった。
どうしてだか、今にして思えば笑っていたように思えるのだ。
“俺の身体とて、いつまで持つか解らぬ”と言ったその意味。
辻丸は“黄龍殺し”の刀を見る。
「ん?」
雅之がそれを不思議そうに見た。
「それは、当主の物ではないか?」
「そうだけど……何で知ってるんだ?」
辻丸は首を傾げる。
「滅多に人目には晒しませんのに。」
良寧も不思議そうだ。
「……そのようなものを必要とするのは、黄龍を殺すものだけだ。」
その言葉は、秘薬の研究をしていた八倉家の行いを知ってのことだと解る。
「それに、1度見たことがあった。幼い頃だったが。」
当主と初めて会った時だったか。
その懐に刀をしまうのを見た。
“美しい刀だ”と思った。
黄龍殺しの刃だと知るまでは。
「貴様が持っているということは……研究に参加しているのか?」
「まさか。」
辻丸は嘲笑うように否定する。
「秘薬だとかいって、化け物を作ろうとしているだけじゃないか。あんな研究があるから、黄龍……闇夜の一族は滅びた。」
悲しい争い。
私利私欲の為の搾取。
辻丸はそれを快く思っていない。
「ふ、」
(そうだな、そういう奴だ。)
雅之は笑う。