散華の麗人
あまりにも昔と変わらない考えで、お人好しなところも変わっていない。
変わったのは立場だけだ。
「では、何故持っている。」
「あいつからもらったんだよ。」
「何?」
「何やと!?」
辻丸の言葉に雅之と一正が驚く。
「その刀は前当主の遺品やと聞いたことあるで。それを簡単に譲ると思えんのやが。」
「そのへんはおれも知らん。」
一正に辻丸は眉間にシワを寄せる。
「ただ、言えるのは……」
そして、外を見た。
「あの男が考えることはおれに理解出来ないってこったい。」
辻丸はそう言うと笑った。
「だけど、あいつのこと……嫌いじゃない。」
雅之を見て言った。
「良く似た親子だ。一筋縄で行かねぇし、素直じゃないし、身勝手で傲慢だ。」
「ほう。貴様に言われるとはな。」
辻丸に雅之は鼻で笑う。
「安い挑発だ。」
そう言って立ち上がる。
「生憎だが、喧嘩を買っていられる程に暇ではない。殴り合いがしたければ、そこの女傭兵にでも吹っかけることだな。」
風麗の方をちらと見て雅之は部屋を出た。
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