散華の麗人
夜は更ける。

月夜が静かに水面を揺らす。

凪ぐ音

「きれいね……」
少女が感嘆の声を上げる。
「おや。」
その後ろから青年が現れた。
「月夜」
少女を呼ぶ。
「どうしたの?」
月夜は白い髪の毛を揺らした。
「こんなところに居るなんて、珍しいと思って。」
「あら。」
青年に月夜は頬を膨らませる。
不服だという顔だ。
「あなたが言ったのよ。ここでまってなさいって。」
「そうでしたっけ?」
「えぇ。」
青年が月夜を宥めるように撫でた。
「それで、うまくいくの?」
「勿論。」
「ふふ!うれしいわ。」
月夜は笑う。
「月が満ちる日も近い。」
そう言って月を見る。
「ふふ」と笑うと二つの人影は闇夜に溶けた。
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