散華の麗人

――敦賀邸
雨が降ってきたので、風正と惣右介、そして茶々は屋内で剣の練習をしていた。
それぞれが竹刀を持って素振りをしている。
「構えが違う！！」
風正の怒声が木霊する。
「この、鬼～！」
惣右介が喚きながら従う。
「あ？もう一度言ってみろ。言える立場か？」
「まぁまぁ。阿修羅のような顔が更に険しくなっていますよ。」
「貴様……斬ってやっても良いのだぞ？」
「然るべき時に、甘んじて受けますとも。」
茶々は対照的に冷静な態度で素振りをする。
暫くそうしていたが、誰かが扉を開けたので動きを止めた。
「そろそろ、休憩にするが良い。根を詰めすぎるのも考えものよ。」
敦賀が部屋に入ってくる。
「そうか。」
風正はそう返事をして立ち去った。
「やれやれ、厳しすぎるのも却って良くないと解る程器用ではないな。」
「戦闘において、甘さは命取りですから。」
茶々は穏やかに言う。
穏やかな態度とは裏腹に全身汗だくだ。
「だけど、ここは戦場ではない！」
惣右介は床に座り込んで喚く。
同じく汗でびっしょり濡れている。
「ですが、いずれは戦うのでしょう？」
「っったりめーだ！だから、こうしてあの鬼に指導してもらっている。」
「はっはっはっ」
諭すような口調の茶々と子供そのものな態度の惣右介を見て、敦賀は笑う。