君だけの天使になる




 二人だけの教室って、こんなにドキドキ
 するんだなって、あの時思ったっけな。


『ねぇねぇ聞いてっ!私杉山君と付き合う
 ことになったんだ~!』



 
 聞きたくなかった。 
 そんなセリフ。


『白ちゃんだから話すんだからね!』



 そんなことを言われたくて
 お前の傍に居たわけじゃないのに。



『ほら、消しゴムの中に緑で名前を書
 けば願いが本当に叶うんだよっ!』



 聞きたく、なかった。



 それから俺は、なにかというと春香に
 嫌がらせばっかりした。
 
 
 雑巾絞って、とか。

 黒板日直やっといて、とか。

 春香が文句を言いそうになると
 何かと杉山の杉、の名前を言ったり、とか。


 少しでも、春香といたくて
 
 わがままな俺の願いなんて叶うはずなくて

 ずっと黙ったまま、俺の心の中に閉じ込めて。




 馬鹿みたいに、自分も消しゴムに緑で
 春香の名前を書いたりして


 どうでもよくなって


 
 だけど、やっぱり好きで。


 消しゴムをその日。
 その日だけ学校に持っていこう


 そんな俺の心すら、神様なんて
 ばらばらにするんだよな。



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