Ending Note〜the answer〜
重い足取りで更衣室に向かい、漆黒のスーツから私物のスーツに着替える。
スーツからまたスーツに着替えるって面倒だな。
アシスタントマネージャーに昇格して、この漆黒のスーツを支給された時は着替えるたびに心が踊った。
だけどな。
月日が経てば、着替えるのがひどく億劫になってくる。
漆黒スーツのまま帰っても良くないか?
そんな考えが頻繁によぎるけれど、“制服着用のままの出退社は厳禁”という規則を、この僕が破るわけにはいかない。
着替えを終えて、漆黒スーツをハンガーにかける。
ついでに三枝の連絡先が記されているメモも、ロッカーの網棚の上にポイと置く。
「……………」
“じゃ、頼むな。これ三枝の電話番号”
マネージャーの命令を思い出し。
数秒、じっとメモを眺めたあとに、声にならないうめき声を上げながら自分の頭を両手でわしゃわしゃとかきむしる。