Ending Note〜the answer〜
僕の“声”に惹かれたという三枝。
顔とか性格とか……一般的に人を好きになる要素は、三枝にとって“おまけ”みたいなもの。
誰かを好きになる理由が、普通の人とはかなりズレていたり。
日々繰り広げられる三枝の“妄想劇場”。
うんざりしつつも、僕は“変わった生き物”として三枝を観察していた。
もちろん、恋愛感情なんてものはこれっぽっちもない。
「……ねぇ、栗沢さん。あたし、大変なことに気づいたんですよ!」
ある日の休憩中。
社内の喫煙ルームで食後の一服をしていた僕の隣で、三枝が顔をしかめて言ってきた。
「……て言うか、三枝。おまえ、タバコ吸わないのになぜここにいる!?」
「いやだ栗沢さんったら。あたしがタバコ吸わないの知ってるなんて」
両手で顔を覆い、照れたように体をくねらせる三枝。
……殴っていいだろうか。
「とりあえず出ようか、三枝。おまえはタバコを吸わない。ここはタバコを吸うヤツだけが集う場所。はい、退場」
淡々と言い放ったあとにドアを指し示すと、三枝はにこりと笑う。