Ending Note〜the answer〜
「……営業マンがボロボロの靴履いてたらヤバいでしょ。だから、休みの日にじっくり吟味して、新しい靴を買いに行きたかったのに」
いつもの行きつけの店でもある居酒屋。
数分ほど遅れてやって来た市瀬は、開口一番に不満をこぼす。
「じゃあ、私のやけ酒に付き合った後に買いに行こう」
「……何時までやけ酒する気ですか」
呆れたように言う市瀬を前に、店内の古ぼけた壁時計をちらりと見る。
もうすぐ18時。
市瀬行きつけの靴屋は21時まで開いているから、じゅうぶんに間に合う。
「靴屋が閉まるまでには解放してあげるから」
言って、私は店員を呼んで生ビールを2杯注文した。
「……で? オトコに振られたんすか?」
温かいおしぼりで手を拭きながら、市瀬はニヤニヤ笑いながら唐突に訊いてくる。
……アホか。
オトコと愛を語り合う時間すらないほどに、仕事が激務なことをじゅうぶんに分かっているくせに。