Ending Note〜the answer〜
「お待たせしましたー。生ビールですねー」
泡少なめの生ビールが入ったジョッキが2つ、テーブルに置かれる。
「……乾杯! ……って雰囲気じゃないっすね」
いつもなら、「おつかれさーん」なんて言いながら陽気にジョッキ同士を軽くぶつけるのだけれど。
何も言わずにゴクゴクと飲み始めた私を見て、市瀬は気まずそうな顔をした。
「………あのさ」
「……はい」
「……もし、“あなたの肝臓に悪性の腫瘍があります”って言われたら、あんた、すぐに入院する?」
何の前置きもなく唐突に本題に入ったもんだから、市瀬は数秒固まったあとに、口に含んでいた生ビールを豪快に吹き出した。
「うわっ、ちょ、汚いんだけど!」
「な、なっ……、なんすかそれ! 静子さん、ガン!? まじでっ?」
「……私じゃないってば」
そう言うと、市瀬はホッとしたような顔つきで、自分がぶちまけた生ビールをおしぼりで吹き始める。