Ending Note〜the answer〜
三枝の嘘を暴けばいいものを、僕は黙って様子を見ることにした。
僕に指摘されて、タバコを持ち直した三枝は正しいくわえ方をする。
そしてタバコの先端に火を点けると、紫煙を肺に吸い込むどころか、鼻の穴を広げながら一生懸命“吹いて”いる。
「……………」
「……このタバコ、湿ってますねぇ」
「三枝。タバコは吹くものじゃない、吸うものだ」
真顔であり得ないことをやらかす三枝に、僕は笑いそうになったけれど堪えた。
ここで笑ってしまったら、こいつは絶対に調子に乗ってしまうに違いない。
「……じゃ、俺は戻るから、おまえはここでタバコでも吹いとけ」
「えっ、ちょっ、待って! えっ!? タバコ! これっ!」
喫煙ルームを出ていく僕を、三枝は焦ったように追いかけてくる。
振り返れば、三枝はタバコを手にしたままだ。
「タバコは置いていけ! 灰皿に捨てる!」
「一緒に戻りましょうよ! 待っててください!」
「なんで俺がおまえを待たないといけないんだ」
「待ってくれないと、このタバコ持って行きますよ!?」
……それは脅しなんだろうか、三枝。
しかしな。
タバコを手にしたまま戻ったら、マネージャーに怒られるのは僕じゃない、おまえだぞ。