それでも君を好きになる




ふ、と可笑しそうに笑ったハルに首を傾げる。




「相変わらずハッキリ言うな。」

「まあね。」

「…だよなー。なんで死んだはずなのにここにいるんだろう、俺。」

「……。」



笑ってる。


別に自分の命が消えたことなんて何も気にしてないというように、笑ってる。



ハルは生きてる頃からこういうところがあった。


自分のことに未練がない。



そういうとこが、あたしは少し怖かった。




「つまり俺、幽霊ってことだよな。」

「そういうことだね。」




ハルの言葉に頷く。



幽霊、ってこんなんなんだ。



ハルは足がちゃんとあるし、体が透けている訳でもない。


だけど――。



そっとハルの髪の毛に手を伸ばしてみる。


彼が生きてた頃、あたしはフワフワと柔らかい彼の髪の毛を触るのが好きだった。



同じような感触を求めて髪の毛に触れようとする、けど。



あたしの手はハルをすり抜けて、後ろの空気をつかむだけ。



…ハルは足もあるし体は透けていない。



だけど。



触れることはできない。




< 5 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop