それでも君を好きになる
やっぱり触れないなあ、うん。
まあ、最初からわかってたし。
諦めたように手を引っ込めると、ハルは一瞬だけ切なそうに目を細めた。
ほんとに、一瞬だけ。
「ハル…?」
「怖くねぇの?」
「は?」
「正真正銘の、幽霊が、目の前にいて。」
怖くねぇの?と繰り返すハルは、唇をきゅっと噛む。
その仕草には見覚えがあった。
あたしは少し笑ってみる。
ハルを、安心させるように。
「怖くないよ。怖い訳ないじゃん。」
「……。」
「ハルは幽霊である前に、あたしの彼氏だし。」
やっぱり、ハルは現在進行形であたしの彼氏だ。
だって幽霊であっても、あたしは彼のことが好きだから。
こんなに、好きだから。
「…ばかじゃねーの。」
「ハルに言われたくないんだけど。」
「…ははっ、」
何が面白かったのか、睨むあたしをジッと見てたハルが吹き出した。
怒鳴ってやろうと思ったけど、ハルが少し泣きそうに笑うから黙っておいてあげる。