それでも君を好きになる




やっぱり触れないなあ、うん。



まあ、最初からわかってたし。



諦めたように手を引っ込めると、ハルは一瞬だけ切なそうに目を細めた。


ほんとに、一瞬だけ。




「ハル…?」

「怖くねぇの?」

「は?」

「正真正銘の、幽霊が、目の前にいて。」




怖くねぇの?と繰り返すハルは、唇をきゅっと噛む。


その仕草には見覚えがあった。



あたしは少し笑ってみる。


ハルを、安心させるように。




「怖くないよ。怖い訳ないじゃん。」

「……。」

「ハルは幽霊である前に、あたしの彼氏だし。」



やっぱり、ハルは現在進行形であたしの彼氏だ。


だって幽霊であっても、あたしは彼のことが好きだから。



こんなに、好きだから。




「…ばかじゃねーの。」

「ハルに言われたくないんだけど。」

「…ははっ、」




何が面白かったのか、睨むあたしをジッと見てたハルが吹き出した。



怒鳴ってやろうと思ったけど、ハルが少し泣きそうに笑うから黙っておいてあげる。




< 6 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop