T&Hの待望
月始めの私立名山高校では、『全校集会』と銘打った『風紀検査』が行われる。
運動場に整列した全生徒が、前から順に服装頭髪をチェックされる流れは、どこの高校も定番で。
殺人的な真夏の太陽。
無風とくれば生き地獄。
それでも懲りない少数派は、様々な自己主張を振りかざし、毎度教師達を戦闘モード化させる。
顛末の滑稽さを強調するような、鋭い陽射しのスポットライト。
役者は毎度お馴染みの顔触れで。
果てなき攻防延々続く。
そんな中当然のようにパスした悠一は、教室に戻って自席に直行した。
未だ運動場でちらつく黒い小さな人影を、細めた目でボンヤリ見下ろし。
……この様子じゃ1限目開始はズレ込むだろうな。
そう確信して世界史の教科書に目を落とした悠一の前に、突然乱雑な音色と共に誰かが座った。
それが、伸一だったのだ。