恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
ぷつっ…



途端に切られて、無機質な電子音が繰り返される。
無言で耳から話した携帯を見つめる。



「どうした?」

「うぅん、切られただけ。大丈夫…っと」



不審に眉根を寄せた藤井さんを見上げて、たいしたことはない、と笑ってみせた。
その瞬間にも、また手の中で振動を始める携帯。


開いたままの画面に、また表示された『非通知』の文字。



「……どうしよう、出るべき?」

「……どうせまた切られるだろ。美里、ゴミ袋は?」

「あ、取ってきます。それじゃあ…」



ありがとうございました、とお辞儀をしようとしたら



「待ってるから、取ってこいよ」

「え、でも」

「早く」



また屈んだ藤井さんはゴミを一つ一つ、灯りの一番届く場所に指で移動させていた。


どうしたものかと立ち尽くして見下ろしていたら下からぎろりと睨まれる。



「…わかりました」



頷いて踵を返す。
携帯をバッグにほりこむと今度こそ家のキーを探して。



「睨まなくってもいいじゃん、怖いんだから」



と、頬を膨らませる。
バッグの中では、まだ携帯が着信を知らせていた。

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