恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
暫しの沈黙のあとだった。
「なんだか、気持ちいいな」
「は?」
今度は私がきょとんとする番だ。
男はじっと私を見つめてる。不愉快な笑い声も今は無い。
「話し方とか考え方が、女の子にしては気持ち良いよ。潔いというのか」
「藤井さん!」
なんと返そうか困ったところで、カウンターの中から声が聞こえた。
カフェのマスターがこちらを伺っているのが見える。
すっと立ち上がったのは今話していた男で、座っていた時には気づかなかった背の高さに少し目を瞬いた。
もう一度私に向けた視線は無言で、手のひらだけがバイバイと言っている。
片割れの後輩君もその背中を追って行き、少々毒気を抜かれてしまった私は、なんのリアクションもできずにマスターと話す男を見つめていた。
藤井っていうのか。マスターと知り合い?
「からかわれただけよ。変に反応しない方がいいよ」
恵美の言葉で我に返ると、彼女は憮然として男の背中を睨んでいて
「ナンパするにしても、余りにも失礼じゃない?ないわあれは」
まぁね。だけど無防備に恥ずかしい会話をしてた私たちも少し悪い。
「もう出ようか。ね、買い物行く前に、店にここのシュークリーム差し入れに持ってってあげようよ。今繁忙期だし皆喜ぶよ」
恵美様のご機嫌が悪くなったので話を切り替えて、早々に退散することにした。
レジ横のショーケースの中にはシュークリームの他に自家製ケーキが並んでいる。
店員を捕まえて、シュークリームを今日出勤の人数分、箱に詰めてもらう。恵美と私、4個ずつだ。
会計を待っている間、さっきよりもカウンター位置が近くて、マスター達の会話が少しだけ聞き取れる。
何か、商品の納品の話をしているようだった。
ほんとに仕事中だったんだ。
店を出るまで、何度か男に目を向けたけれど、視線が合うことはもうなかった。
「なんだか、気持ちいいな」
「は?」
今度は私がきょとんとする番だ。
男はじっと私を見つめてる。不愉快な笑い声も今は無い。
「話し方とか考え方が、女の子にしては気持ち良いよ。潔いというのか」
「藤井さん!」
なんと返そうか困ったところで、カウンターの中から声が聞こえた。
カフェのマスターがこちらを伺っているのが見える。
すっと立ち上がったのは今話していた男で、座っていた時には気づかなかった背の高さに少し目を瞬いた。
もう一度私に向けた視線は無言で、手のひらだけがバイバイと言っている。
片割れの後輩君もその背中を追って行き、少々毒気を抜かれてしまった私は、なんのリアクションもできずにマスターと話す男を見つめていた。
藤井っていうのか。マスターと知り合い?
「からかわれただけよ。変に反応しない方がいいよ」
恵美の言葉で我に返ると、彼女は憮然として男の背中を睨んでいて
「ナンパするにしても、余りにも失礼じゃない?ないわあれは」
まぁね。だけど無防備に恥ずかしい会話をしてた私たちも少し悪い。
「もう出ようか。ね、買い物行く前に、店にここのシュークリーム差し入れに持ってってあげようよ。今繁忙期だし皆喜ぶよ」
恵美様のご機嫌が悪くなったので話を切り替えて、早々に退散することにした。
レジ横のショーケースの中にはシュークリームの他に自家製ケーキが並んでいる。
店員を捕まえて、シュークリームを今日出勤の人数分、箱に詰めてもらう。恵美と私、4個ずつだ。
会計を待っている間、さっきよりもカウンター位置が近くて、マスター達の会話が少しだけ聞き取れる。
何か、商品の納品の話をしているようだった。
ほんとに仕事中だったんだ。
店を出るまで、何度か男に目を向けたけれど、視線が合うことはもうなかった。