恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「心当たりは?」

「ありますよ。これ、夏くらいに仕事帰りに笹倉んとこお泊まりした時です」



それは、二人ならんでマンションのエントランスに入っていくところで、そこは確かに見覚えのある彼のマンションだった。



「いや…色々突っ込みたいとこなんだけどな。そうじゃねぇよ。嫌がらせされるような心当たりってことだ」



私の勘違いに、苦笑を漏らされる。
けれどすぐに、表情はまた険しくなった。



「ゴミの悪戯は、お前が標的だってことだろ」



そう指摘されて、やっと気がついた。
ゴミを詰め込んだ嫌がらせは、あの写真が入っていた事で急速に具体的な悪意となった。


それは最初から私にむけられてたってことだ。


嫌がらせをされるような。
恨みを買った、覚え。


マグカップを包んだままの両手をテーブルに乗せて、考え込む。



「あるのか?」

「や…ありすぎて。わから、ない。というか」



今までの遊び相手の絡み、くらいしか想像がつかないのだ。
そうなると、数など数えられるわけもない。


第一殆ど顔も覚えていないのだから。


自分の過去の行いに、バツが悪くてへらりと愛想笑いをする。
私の言いたいことが伝わったのか、また鼻に皺を寄せて歪めた顔を披露された。
< 121 / 398 >

この作品をシェア

pagetop