恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「迎えに行ってやる」

「はぃ?いや、いいですよ。駅からダッシュして帰るかタクシー使います」



私は慌てて両手を振って拒否した。
まさか、そんなことまで言い出すとは思わなかった。


無神経に絡んでくるし邪険にしても堪えた様子もなく通ってくるし、かなり面倒くさい人ではあるが、根っこは良い人なんだろうけれど。



「それでもし何かあったりしたら寝覚め悪いだろうが。くそ、なんでこんな面倒なことに関わってるんだ俺」

「はぁ?そっちも面倒くさいって思ってるんだったら別に放ってくれたらいいじゃないですか」

「そっちもってなんだ、俺のどこが面倒なんだよ」

「あ、しまった」



思わず本音が漏れてしまった。
両手で口を抑えて見上げると、苛立ちが眉に顕れている。


その顔、怖いってば。



「だって、藤井さんに何のメリットもないじゃないですか」

「じゃあメリットよこせ」



恐々と、これ以上眉間の皺が増えないようにそう言ったのに、返ってきた言葉は無理難題。



「1回送るごとにキス1回な」

「いやですよ」



なんでそうなんの。
でも、にやりと笑った顔が藤井さんらしくて、私も笑った。
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