恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~




「いらっしゃいませ。いかがですか?」


通り過ぎるだけの客にも声掛をしながら、時間が過ぎるのを待つ。


今日も暇だし在庫整理でもしにいこうかとも思ったが、連日暇があれば整理しているので、もう手を入れる必要がないくらい片付いている。


ぼんやりと向かいの店を見れば、さすが広いスペースをもらえるメーカーなだけあって、閑散期でもそれなりに客の出入りがある。


笹倉がカウンターで包装しているのが見えた。


あれからまだ一週間ほどだが、現実あまり変わらない私達。
すれ違えば挨拶するし、休憩室で会えば話もする。


ただ、二人で会わなくなっただけ。
それを仄めかす仕草や絡まる視線が、一切消えただけ。


これが正しい。これが普通だ。


視線を外して、自店のカウンター内を向いた。
カナちゃんも手持無沙汰な様子で、意味なく在庫ノートをめくっている。



「美里さん、少し早目にお昼行きます?…今日は恵美さん、お休みですし」



無理に時間合わせる必要ないし。
そう、こちらもあれから進展なしだった。


上手く時間が合わなくて誘えなかったり、かわされたり。
昨日に至っては、本気の猛ダッシュで逃げられた。
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