恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
8月に入り、御中元シーズンも過ぎて客足は落ち着いて来ていた。
繁忙期は、社員は皆10連勤など当たり前の職業である。


私も恵美との食事の後は、パートさんの病欠が入ったこともありなんと14連勤。連日残業当たり前。


そんな超繁忙期の反動だろうか。


世間は夏休みでそこそこ人も入っているし、お盆などはお供えや里帰りの土産物などで承ることも多いが、ひどく暇に感じた。


9月になって閑散期に入れば人手を減らせるので、7月の怒涛の連勤の調整で連休がもらえる。
そんな、少しばかり気が抜ける時期のことだった。



倉庫での在庫チェックを終え、店内に不足気味の商品をダンボールに入れてフロアに戻る途中で笹倉と会った。



「お疲れ様ぁ」

「お疲れ。持とうか?」



手に丸めた書類をぽんぽんと肩の上で遊ばせながら事務所から出てきた彼は、言うなり私の手にあるダンボールをひょいと片手で持ち上げた。



「なんだ、軽いな」

「袋詰めのクッキーだからね。いいよ、持てる」



ありがと、と付け足しながら再び箱を受け取って、二人で洋菓子フロアに戻る通路を抜ける。


仕事中の彼は、意外と気が利く使えるヤツだ。


洋菓子というのは実は何かと力仕事が多いのに、販売員の殆どは女子だ。
男手は兎に角重宝される。
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