恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
三叉路を通り過ぎて、少し行くとすぐに私のアパートの入口だ。


…どうするつもりなんだろう。
多分これまでいちゃついてたのは、犯人をおびき出そうってことなんだろうけど、相手が隠れて行動してたらなんにもわかんないわけで。


アパートの前に着いて、いい加減話して欲しくて口を開こうとした時。


「ちょっと待って」


彼が荷物を肘にかけて、携帯を出してきた。


「あ、釣れたみたい」

「え?」


意味がよくわからなくて笹倉を見上げていたら、その向こう側に、長身のスーツ姿が走ってくるのが見えて


「は?藤井さん?」


状況把握、頭の整理をする間もない。
藤井さんはやや慌てているように見えた。


「俺が回り込むまで待てって言ったのに、捕まえにかかりやがった!」


目が点の私はまるで無視で笹倉にそういうと目の前をダッシュで通過。


「まじかよ」


そして、笹倉も私の手を引っ張って走り出す。


すぐ先、三叉路で、もみ合っている小柄な人影が二つ見えた。
近づくとすぐにわかる。


ショートカットの女の子に二の腕を掴まれたその人物は、私達が近づくと真っ青になり、その場にしゃがみこんだ。


携帯を持った手を、藤井さんが掴んで取り上げた。
私を見て青ざめ、顔を伏せたその様子に私は彼女が嫌がらせの犯人なんだと悟った。

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