恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「……すみませんでした」
長い沈黙のあと、三輪さんから聞けた言葉は謝罪ばかりで。
蚊の鳴くような小さな声で、途切れがちに繰り返す。
「…もう…こんなことしません。本当に…」
「そうじゃなくて、どうしてって…」
こんな状況で、ある程度わかっていることを暴露させようとしている私は酷いのだろうか。
一瞬、そんな気持ちが生まれたほどだ。
僅かに上げた三輪さんの顔は、後悔とか恐れとか、何より羞恥とかが綯交ぜになって唇が震えていた。
真っ赤に充血した目は、誰とも視線を合わせるのを怖がっていて。
別に、それほど怖い思いしたわけじゃない。
だからもうこのまま帰してあげようか、そう頭を過ぎった時、恵美が言った。
「ちゃんとはなさなきゃダメよ」
その声に顔を見上げれば、厳しい顔で三輪さんを見下ろす恵美。
「自分の中だけに閉じ込めて言葉にしないから、こんなことになるの。自分で昇華できないなら、ちゃんと言わなきゃ終われないよ」
三輪さんが、ぎゅっとキツく目を瞑って、ぽたぽたと地面にシミをつくった。
「…きで。…ずっと、好きだったんです…っ」
ざわざわと木を揺らす風は、少しひんやりとしていた。