恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「自分でも、頭ん中ぐちゃぐちゃになっちゃって……だってずっと羨ましいと思ってた。

同じ駅だから一緒に帰りましょうって一言が言えないくらい私は距離を置かれてるのに、狭山さんは飲み会の後いつも当然みたいに一緒に帰ってて。

 悔しくて、衝動的にポストに悪戯したら…少し…気が晴れた気分になって」



顔は上げられないままに、けれど正直に話してくれた。
同じ駅なら、そう言ってくれたら良いのに。


そう思いながら、そういえば彼女がどこに住んでるのかなど、私からも話を聞いたことがなかったことに気がついた。


もう少し、気に留めてあげていればよかったのかもしれない。



「ごめんなさい。少し怖がればいいって思って、写真丸めて入れたりもしました。噂だって、まさかあんな尾ひれがつくとは思わなくて。

 ただ、先輩がいるのに藤井さんにも口説かれて、色目使ってるように思ったんです。

 噂好きな女の子同士で二人の話をしたらどんどんエスカレートして…あんな酷い内容になっちゃって…」


そこまで話して、膝の上に突っ伏した。



「ね。無言電話もそう?」



聞くと、小さく頷いた。



「…悪戯しに来た時、二人で帰って来たのを見て、カッとなって…」

「……大体…わかった。いいよ、もう」



居た堪れなくなって、そう言ったのだが。
急に顔を上げた三輪さんに、逆に私が睨まれた。



「でも、狭山さん最低です!先輩がいるのに、藤井さん家にあげたりして…!」



うん。
まずそこからだ。


とりあえず、訂正しなければいけない。



「あのね、私と笹倉、付き合ってるわけじゃないの。その引っかき傷も私じゃないよ」

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