恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
岐路にいると気づく時




三輪さんは、こちらが驚くくらい何事もなかったように出勤してきた。
朝、普通に挨拶しながら眼前を通過していく後ろ姿を見送って、釈然としないながらに安心した。


昼休憩で笹倉と一緒になった時に、そう話したら



「まぁ、表面はそう見えても、内心はそれなり葛藤してると思うけど」



その証拠に、小西君がまた飲み会をしようと話してきても、適当に濁してしまったらしい。
流石に、そこに混じるわけにはいかないと思ったようだった。


季節は10月、これからじわじわと忙しくなっていく。
それまでに、またみんなで飲めたらいいなと思っていたけれど、そんな空気ではなかった。


それは、三輪さんのことだけでは、ないけれど。


反して全くマイペースの人もいる。
相も変らず営業の合間に店にやってきては、バームクーヘンを買っていくこの人は、今日も目立っている。



「もう、こんなにしょっちゅう来られたら、噂が全然おさまらないじゃないですか」

「へー。噂を気にするタイプとは思わなかった」



暇なやつには言わせとけばいいだろ。
藤井さんはそういうけれど、こちらは毎日出勤する場所なわけだから……まぁ、そんなに気にしないけど。


今日は、季節限定のハロウィン商品を選んだ。
営業先の女子従業員にお土産らしい。



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