恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「今日何時?」

「…18時ですよ」

「じゃあ飯行こう」

「…めっちゃ睨まれてますよ」

「知ってる知ってる」



横をみれば、となりの店から恵美がそれこそ刺すような殺気込の視線を飛ばしてきていて、藤井さんはわかってて敢えて無視を決め込んでいる。



「一体何やったらあんなに嫌われるんですか」

「最近、わざと向こうも寄ってカステラ買ってったりしてる」



絶対、それだけじゃない。それ以前からの話なんだけど。
どんだけ睨まれても藤井さんは悪そうな笑顔を浮かべていて。



「人の嫌がる姿って楽しいよな」



最低だな、この人。


そのまま、私の返事も確認せずに帰って行った。
多分、また出口で待ってるんだろうと思う。


時計を見れば、もうじき休憩時間だ。
在庫整理に行っているカナちゃんが帰ってきたら、いこうかな。


ゆっくりフロア全体を見渡すついでのようにして、向かいの店に目をやる。
相変らずよく客が入っていて、忙しなく動く笹倉の姿が見えた。


私はといえば。
笹倉と二人で会うこともなくなり、以前のように合コンやナンパについていくこともしなくなった。



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