恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
◇
「…――い。おーい」
「…大丈夫です。ちゃんと聞こえてますよ」
仕事上がり、藤井さんは案の定出口で待ち伏せしていた。
連れてこられたのは、いつもの、という割には久方ぶりのカフェで、金曜の夜だからか随分と賑やかだった。
テーブルには適当に頼んだ一品料理が並んでいるものの、私の箸は余り進まず、藤井さんの話も聞こえてない……わけでもないけれど自分の頭の中が忙しい。
はぁぁーっと深く吐いた溜息に、藤井さんの食いつきが良い。
「ぼーっとしてるかと思えば、溜息ついて、また何かあったのか」
「ただの考え事です。気にしないでください」
と言ったものの、藤井さんは気になるようでじっとこちらを見ていて、私もそれをじっと見つめ返すのだけど…思考回路を占めているのは、昼間の一条さんの話だ。
別に、悪い話では、ないのだ。
しかし。
「……ぁああー!もう、なんで次々考えることが増えるんだろう」
「だから一体なんなんだって」
頭を両手で抱え込んだ私を見下ろす藤井さんはさも楽しそうだ。
そう見えるのは私の僻みだろうか。
「…――い。おーい」
「…大丈夫です。ちゃんと聞こえてますよ」
仕事上がり、藤井さんは案の定出口で待ち伏せしていた。
連れてこられたのは、いつもの、という割には久方ぶりのカフェで、金曜の夜だからか随分と賑やかだった。
テーブルには適当に頼んだ一品料理が並んでいるものの、私の箸は余り進まず、藤井さんの話も聞こえてない……わけでもないけれど自分の頭の中が忙しい。
はぁぁーっと深く吐いた溜息に、藤井さんの食いつきが良い。
「ぼーっとしてるかと思えば、溜息ついて、また何かあったのか」
「ただの考え事です。気にしないでください」
と言ったものの、藤井さんは気になるようでじっとこちらを見ていて、私もそれをじっと見つめ返すのだけど…思考回路を占めているのは、昼間の一条さんの話だ。
別に、悪い話では、ないのだ。
しかし。
「……ぁああー!もう、なんで次々考えることが増えるんだろう」
「だから一体なんなんだって」
頭を両手で抱え込んだ私を見下ろす藤井さんはさも楽しそうだ。
そう見えるのは私の僻みだろうか。