恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~



「…――い。おーい」

「…大丈夫です。ちゃんと聞こえてますよ」


仕事上がり、藤井さんは案の定出口で待ち伏せしていた。
連れてこられたのは、いつもの、という割には久方ぶりのカフェで、金曜の夜だからか随分と賑やかだった。


テーブルには適当に頼んだ一品料理が並んでいるものの、私の箸は余り進まず、藤井さんの話も聞こえてない……わけでもないけれど自分の頭の中が忙しい。


はぁぁーっと深く吐いた溜息に、藤井さんの食いつきが良い。


「ぼーっとしてるかと思えば、溜息ついて、また何かあったのか」

「ただの考え事です。気にしないでください」


と言ったものの、藤井さんは気になるようでじっとこちらを見ていて、私もそれをじっと見つめ返すのだけど…思考回路を占めているのは、昼間の一条さんの話だ。


別に、悪い話では、ないのだ。
しかし。


「……ぁああー!もう、なんで次々考えることが増えるんだろう」

「だから一体なんなんだって」


頭を両手で抱え込んだ私を見下ろす藤井さんはさも楽しそうだ。
そう見えるのは私の僻みだろうか。



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