恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「別になんでもないです。大丈夫です、自分で考えますから」

「…ほんとに極端だな」


気を取り直してチーズオムレツを一口頬張った私に、藤井さんは呆れたようにそう言うと頬杖をついた。


「一人で溜めないで誰かに相談でもしろよ」


意地でも言わせるのかと思ったら案外ソフトな対応だったので、不思議に思って首をかしげていると、藤井さんがそれに気付いて苦笑した。


「…前に説教したこと、あの子に話したら怒られたんだよ」


あの子とは、言わずと知れた恵美のことだろうけれど。
それがなんで藤井さんが怒られることになるのか、わからなくて言葉の続きを待った。


「そんな説教したら、みさはますます何にも言わなくなるだろうって。甘え過ぎてるんじゃない、甘え方を間違っちゃってるだけだってえらい剣幕で怒られた」


少し、目が潤んだ。
あの喧嘩の最中に、恵美が私の為に怒ってくれたことが嬉しくて、ほっこりと胸があったかくなる。


「で、そう思うなら美里を避けて余計にストレス溜めさせるのもやめたらって言ったら、更にキレられた」



「……藤井さん」

「ん?」

「嫌われた理由、はっきりしてるじゃないですか」


間違いなくそれですよね。
彼もわかってるようで、楽しそうに肩を揺らして笑っている。


全く、へこたれるということを知らないのだろうか。彼のメンタル構造を知りたくなるが、おかげで少し、気持ちが切り替わって。



「本社から、異動の打診があったんです」


昼間喫茶店で聞いた、一条さんの話は決して悪くはないが、嬉しいものでもなかった。



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