恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
正直、余計なお世話かとも思ったんだけど、近づくと正解だと思った。


狭山、瞳孔開いてね?


それどころじゃないけど、慌てっぷりに笑いそうになった。
ぐっと堪えて、声をかけると一息にまくし立てる。


状況さえわかってりゃ、こういうのは第三者が動いた方が案外うまくまとまったりする。
他店のことだからぶっちゃけ責任無いし。


冷静でいられるって意味で。


「増田さん、指定の熨斗を事務所に行って用意してきてくれる?」


今にも泣きそうだった販売員を、ひとまず下がらせる。


そうそう、増田さん。
普段狭山はカナちゃんって呼ぶから、ネーム見てやっと苗字を思い出した。


お客様を宥めて帰りの時間や住所などを聞いているうちに、狭山はすぐに他店と話をつけて呆気ないほど事は解決した。


最初から目くじら立てなきゃ、一本早い電車に乗れたろうに。


とか余計な事は口に出さないけど。
後は、仕事上がりに狭山と一緒に届ける手筈で、自分の店に戻った。


あ。お届けの時、念のため店の制服の方が良いって言うの忘れた。


まぁ、狭山なら大丈夫か。
多分、届けるまでは仕事と捉えて制服で出てくる。


はず。
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