恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「その、時は、ちょっとお互い感情的だったっていうか。別れ話してるとこだったから、私もそこまで頭まわらなかった…て感じで」

「は?…何の話?」


恵美が訳がわからないと眉根を寄せた。


「ぇえ?」

「…その。…した時の話じゃないの?なんで別れ話?」



恵美も私も、ぼそぼそと小声で、しかも単語を省くから埓が明かない。



「え?だから別れ話しながら…あ、しながら別れ話?」



どっちが先だったか、とか考えて。しまった、と口を抑えた。

恵美の表情を見れば、私の言わんとしたことがわかったようで…みるみる険しい顔つきに変わっていった。



「…えっちしながら別れ話してたってこと?」

「いや!結果そうなっただけで!最初からそんなわけじゃ!」

「どうなったらそうなんの?私、二人のそういういい加減なトコ、大っきらい!」



最後は声を荒げて言った。


私は、身を竦ませて、ゴメンナサイと言う。
あの状況を、どう説明したってやっぱり迂闊だったことに違いはない。


喧嘩して仲直りして以来、恵美はこれは嫌い、これはダメ、と自分の思ったことをストレートに口にするようになった。



「私に謝ってもしょうがないじゃない…」



恵美は脱力して背凭れに体を預けると、眉尻を下げた。



「みさの、覚悟が決まってるのは顔見たらわかるよ。でも、やっぱり何も言わずにっていうのは私は違うと思う」


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