恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
それはそうなんだけど。
笹倉本人に聞けない私は、他に聞き所がないわけで。
恵美を見れば、台所で何かしてくれているけど、こちらを気にはしているようで。
一瞬だけ目が合った。
多分、こういう展開を予測して藤井さんを呼んだのだろうなと思う。
一人で産むという私に、もう一度考えさせる為の最後の手段。
「良い友達だな、小うるさいけど」
藤井さんも同じように感じたのか、壁に寄せ積んだダンボールを背に笑った。
「藤井さんと私の性格よくわかってますよね」
「その友達の、気持ちも汲んで。ちゃんと話せ。不倫だったわけじゃなし、何も言わずにというのは早計すぎる」
私はしゃがみこんで、フローリングの床を指で弄りながら言う。
「なんか…今更…ねぇ」
「その今更って、ただの逃げにしか聞こえねぇ。お前らには決定的に言葉が足りねぇ。その口は何のためについてんだ」
その口は、何のため?
以前に一度、聞いた言葉。
だからか一番、胸に染みて涙が滲んだ目で藤井さんを見上げた。
「…お母さん…!」
「誰がだ」
反応は冷たい。
頃合を見計らっていたのか、台所の棚を開いた恵美がこちらにタッパーを片手で振りながら言った。
「みさぁ。このタッパーやたらいっぱいあるけど、全部持ってくの?」
「…あー…全部は、いらないかな」
じゃあ何個か頂戴っていう恵美に、適当に頷きながら。
ああ、そうだ。
あの時のタッパーを、返してもらわなくちゃ、いけないし。
ね。
何か、理由を作らなければ動けない自分に少し笑った。
笹倉本人に聞けない私は、他に聞き所がないわけで。
恵美を見れば、台所で何かしてくれているけど、こちらを気にはしているようで。
一瞬だけ目が合った。
多分、こういう展開を予測して藤井さんを呼んだのだろうなと思う。
一人で産むという私に、もう一度考えさせる為の最後の手段。
「良い友達だな、小うるさいけど」
藤井さんも同じように感じたのか、壁に寄せ積んだダンボールを背に笑った。
「藤井さんと私の性格よくわかってますよね」
「その友達の、気持ちも汲んで。ちゃんと話せ。不倫だったわけじゃなし、何も言わずにというのは早計すぎる」
私はしゃがみこんで、フローリングの床を指で弄りながら言う。
「なんか…今更…ねぇ」
「その今更って、ただの逃げにしか聞こえねぇ。お前らには決定的に言葉が足りねぇ。その口は何のためについてんだ」
その口は、何のため?
以前に一度、聞いた言葉。
だからか一番、胸に染みて涙が滲んだ目で藤井さんを見上げた。
「…お母さん…!」
「誰がだ」
反応は冷たい。
頃合を見計らっていたのか、台所の棚を開いた恵美がこちらにタッパーを片手で振りながら言った。
「みさぁ。このタッパーやたらいっぱいあるけど、全部持ってくの?」
「…あー…全部は、いらないかな」
じゃあ何個か頂戴っていう恵美に、適当に頷きながら。
ああ、そうだ。
あの時のタッパーを、返してもらわなくちゃ、いけないし。
ね。
何か、理由を作らなければ動けない自分に少し笑った。