恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
臆病者。

本当にこのままでいいの?





仕事中も、帰りの電車でも。

頭の中で、恵美ちゃんの声がリピート再生する。

あぁ、ちくしょう。


深く溜息をついたら、窓ガラスが息で曇る。


電車の扉の傍で窓から、家の灯りが流れるのを見ていたら目が疲れて来た。

遅番の帰りで、外はすっかり夜景だった。



「笹倉さん。お疲れ様です」


駅について電車を降りたところで、背後から声をかけられ振り向いた。
あの一件以来、瑛人先輩、とは呼ばなくなった三輪さん。


「あぁ、お疲れ」


電車が偶然同じでも別の車両に乗っていることが多くて、声をかけたことも、かけられることも今までなかった。

だから、少し驚いたが。


「私、退職することにしました」


多分、その話だろうと思った。
だからといって俺にどうして欲しいのか。


引き止めて欲しいのかと思ったが、三輪さんの表情を見ればそういうわけでもなさそうで。


改札に向かって、歩きながら話をした。


「どこか、次決まってんの?」

「いえ、まだ。第一、すぐには無理だって言われましたし。当然ですけど」

「あぁ、そりゃね。年末は無理だろうし」


社会人なら、せめて3ヶ月前は基本だしな。


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