恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「よくわかんねぇこと言ってたんだよ。もうそれどころじゃないって。仕事でなんかあったのかと思ったけど…どう考えてもしっくりいかねぇし」


異動、引越し。

それだけじゃ、ないんじゃないか。

昨晩ずっと会話が頭から離れなくて、後になって気がついた。


カナちゃんは何も知らされてなくても。
恵美ちゃんなら、全部知ってる筈だ。


「誤解があるように思うから言うけど…みさが宙ぶらりんだったのは、瑛人君のことにだけだったと思うよ」


大きな二つの瞳が、射抜くようにこちらに向けられている。
整った顔は一見優しそうではあるけれど、その眼力は性格そのもので…つまり強い。


「合コンとかいろんな場所で遊んでたのは事実だけど、その場限り。それ以上は絶対にどシャットだったのは知ってるでしょ。瑛人くんだけだよ、あの子が揺れたのは」

「それ、は。どういう」


どう受け取っていいのか、わからず眉間に力が入る。
喜んで良いのか悪いのかわかんねぇ。


「藤井さんは、ちょっと毛色が変わった感じで、暫く戸惑ってはいたみたいだけど。ちゃんと断ったって言ってたし」


それを聞いて、ちょっと嬉しかったのは事実だ。
俺はそんなに器でかくない。



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