恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~



遅番の時、店を出るのは9時半を過ぎてしまう。
退出する従業員で溢れる出入り口は、ぞろぞろと疲れた背中が並んでいる。


その中に見知った後ろ姿が見えて、前を歩く人を数人交わしながら駆け寄った。
いつもより、プラスaの意味を込めて。



「今日はほんっとにお疲れ様」

「恵美さぁあん!も、怖かったですよ!美里さんと笹倉さんに助けられました」


隣の店の後輩が甘えて擦り寄ってくるので歩きづらい。


「あれから無事解決したの?」

「はい、お届け終わってすぐに美里さんから報告ありました。ご心配おかけしました!」

「ああいう時、男性スタッフがでてきてくれると助かるよね。瑛人君、副店に昇進したから張り切っちゃったのかしら」


そう思うと、彼も案外かわいい。


「そうなんですか?!笹倉さん、まだ若いのにすごくないです?」

「ちょっと早いかもだけど、大卒だしね。要領良さそうだし」

「宴会しないといけないですねぇ。はぁあ、私てっきり、美里さんが困ってたから助けにきたのかと思ってました」



ヒーロー参上!みたいなノリで。とか言いながらケラケラ笑う後輩。
ごほっ…。喉が詰まって、思わず。



「けほ。え、なんで?そう思ったの?」

「あれ、違いました?私、あの二人付き合ってるんだと思っててっきり…」



間違ってるようなないような、でもそれ、気づかれちゃまずいんだけど!

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