恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
昨日買い物したものをどうするか、でまた口論。



「今のとこまだここに置いとけばいいだろ、住む場所も決めてから運び出せば」

「どこに住むにしても、産むのは実家で産むよ。病院も向こう。だから持って帰る!産後ってすぐに動けないんだよ?」



多分。
ネットで調べた結果、里帰りで出産する人が多いらしい。


…うちのお母さんも、その頃には退院してるだろうし。
家事くらいはできるように…なっててくれると願おう。


笹倉が、面白くなさそうに車に詰め込む荷物を玄関まで運ぶ。
彼が車を持ってることも免許持ってることも知らなかったという、この事実。


私みたいに、ただの身分証明書としての扱いになってる場合もあるけど。



「…ベビーカーは置いてく。すぐには使わないだろうし」


あんまり素っ気ないと拗ねそうなので、私から少し折れることにした。


「別に私、逃げないよ?もう決めたんだし」



肩を竦めてそう言うと、笹倉は少し目を見開く。
そして、バツが悪そうに目を逸らして苦笑した。



「俺、カッコわる」

「…良くはないね」

「そこは嘘でもカッコ良いって言えよ」



ゴツンと旋毛に拳骨が落ちてくる。
痛くはないけど。


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