恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
昼頃に父親から折り返し電話があり。
「家に居るからさっさと帰ってこい」
とのお達しだった。
夕方着くらいの気持ちで呑気にしていたので、昼食もそこそこに慌てて車に乗り込む。
「怖いなぁ、とても穏便に迎えてくれそうな雰囲気じゃなかったわ」
「…怖いの俺ね」
マンションの駐車場で少し暖気をしてから発進する。
笹倉の車は黒のワンボックスで、私はあんまり興味がないので車種はよくわからなかったけれど、広くて快適だった。
彼が車を持ってることなんて全然知らなかったし、必要もなかった。
一緒に出かけたことなんて一度もない。
仕事帰りに気紛れにお互いの家を行き来する。
それが、今まで。
「私達って、ほんとに何にも知らないね」
「これからだなぁ」
笹倉が焦る理由が、少しわかった気がする。
普通の、これから結婚する恋人同士と違って、私達は殆どお互いを知らないのだ。
助手席から、彼の横顔に視線を向けた。
飄々としていて、普段の彼からは焦るところなんて余り想像できないのに。
「ゆっくり知り合えばいいよ」
自分が焦ったくせに、彼が言う。
多分早く、世間の普通に追いつきたいのだと思う。
「家に居るからさっさと帰ってこい」
とのお達しだった。
夕方着くらいの気持ちで呑気にしていたので、昼食もそこそこに慌てて車に乗り込む。
「怖いなぁ、とても穏便に迎えてくれそうな雰囲気じゃなかったわ」
「…怖いの俺ね」
マンションの駐車場で少し暖気をしてから発進する。
笹倉の車は黒のワンボックスで、私はあんまり興味がないので車種はよくわからなかったけれど、広くて快適だった。
彼が車を持ってることなんて全然知らなかったし、必要もなかった。
一緒に出かけたことなんて一度もない。
仕事帰りに気紛れにお互いの家を行き来する。
それが、今まで。
「私達って、ほんとに何にも知らないね」
「これからだなぁ」
笹倉が焦る理由が、少しわかった気がする。
普通の、これから結婚する恋人同士と違って、私達は殆どお互いを知らないのだ。
助手席から、彼の横顔に視線を向けた。
飄々としていて、普段の彼からは焦るところなんて余り想像できないのに。
「ゆっくり知り合えばいいよ」
自分が焦ったくせに、彼が言う。
多分早く、世間の普通に追いつきたいのだと思う。