恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
後部座席に荷物が乗せてあって、その中に一つ見覚えのない紙袋があった。



「ね、あの紙袋何?」

「ずっと返してなかったタッパー持ってきた」

「あぁ…っつうかあれこそ、置いといてもいいじゃない」

「返すつもりで紙袋に入れてたから、ついそのまんま持ってきたんだよ」


うっさいな、と呟きとともに、また唇がとんがったのが横から見るとよくわかる。


問題は、ベビーカーかタッパーかではないのだ。
安心材料か否か。


なんだか気まずさを感じて、少し話しを逸らす。



「肉じゃが、美味しかった?」

「んー…うん?」

「なんで疑問形」

「じゃがいもが。がりがりじゃなかったら、美味しかった」



その言葉に、私はぐりんと笹倉の方に顔ごと向いた。
私が食べたやつは、ちゃんと煮えてた、はず。



「うそ、生煮えだった?笹倉の方にでかいジャガイモたくさん入れたのに」

「多分それが原因じゃね?」


そう言えば、あの時はじゃがいもの大きさを揃えることもしてなかったし。
ははっと笹倉が漸く笑って少し安堵するけれど、今度は私が拗ねたい気分だ。



「玉ねぎは旨かった」

「うるさい。絶対リベンジするから」

「はは。待ってる」

「うん」


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