恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
彼の車を見送って、溜息をつく。
あの焦りは、私に信用がないからだろうか。


勝手に距離を置こうとしたり突然いなくなったり連絡無視したりと、思い起こすと随分とあんまりな対応しているので、仕方ないのだけれど。


会わなくなって、以前のように一緒に居たいと思ったこともある。
失ってから気づいた、好き、の感情も嘘じゃない。


…けれど改めて、男女になっちゃうと、噛み合わなくなる。
そんな気はしてた。


それが積み重なるのが、怖い。
だから、一緒に子育てするのなら、私は「家族」で居たいのだ。



いつまでたっても変わらない、私の臆病が首を擡げる。
それが、彼の臆病を生むのだとわかってても。





うちに帰ると、殴った手前かやけに気不味い顔をした父親が、ダイニングテーブルでビールを飲んでいた。


私は、敢えて何も言わずに運び込んだ荷物を整理しようと手を伸ばした。



「…なんかツマミないか」

「ないよ、急いで帰って来たからスーパーも寄れなかったし」



笹倉に、喧嘩するなと言われてるからなんも言わないけどね。


せめてと素っ気ない返事をした。
買い物したベビーグッズを出して、ショップバッグを畳む作業をしながら。


< 326 / 398 >

この作品をシェア

pagetop