恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
心なしか肩を落とす父親を尻目に、笹倉に持たされた紙袋からタッパーを取り出した。



「…あれ?」



蓋だけピンク色の、器は透明なタッパーなのですぐに気づいた。
何か袋菓子のようなものが詰められてあり、首を傾げながら蓋を開ける。


私の声に反応した父が、こちらを見て言った。



「どうした」

「うん、前に笹倉にお裾分けした時のタッパー、返してもらったんだけど、中に、これ」



言いながら、蓋を開けたタッパーを傾けて見せた。
中には、柿の種の小袋が幾つか詰められてあったのだ。



「へぇ。今時の若い子が、そんなこと知ってるんだな」

「何?」



感心を含んだ声をあげる父親に、意味がわからない私。
柿の種の小袋を、がさがさと音をさせてテーブルに出した。



「昔の習慣でな、借りた器には何でもいいから何か詰めて返すもんなんだ。地域によっては、『おうつり』とか言ってな。古い習慣だし、まして男がそれを知ってるのは意外だった」

「女の私も知らなかったしね」

「…お前はもうちょっと知ってろ。両親にしっかり躾られてるんだろうな」



そういう父親に小さく舌を出して肩を竦める。


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