恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
スマホを一度触ってから、自分のガラケーを見ると物凄く時代を感じる。


特に古いしね。
何年使ってるかもう忘れた。



「恵美もいつの間にかスマホだし。明日帰りに見に行っていい?」

「いいよ」

「ってか、近い近い」



いつまでこの距離?
話し辛いんだけど。


見れば、何か複雑な表情をした、笹倉。
複雑過ぎて読めない。



「なぁ、連絡とってんの?」

「え、藤井さん?や、あれから全然。どうしてんのかな」



あれから、っていうのは。
あの二人に図られた、あの日からだけど。


二人のおかげで、今こうしてるのだし、きちんと一度お礼と報告はしておくべきかと考えてはいたのだが。


あまりにも音沙汰がなさすぎて。
思えば、私から連絡とることなど、嫌がらせ事件の時のシフト連絡くらいだった。



「笹倉も連絡取ってないの?いっぺん電話してみよっかな」

「は?なんで」

「なんでって。お世話になったし、報告しとくべきでしょ」

「わかった。俺がしとく」



そして、ゼロ距離。
唇が掠めていくように一瞬だけ触れて、反論の言葉を止めた。


そのまま私の頭を抱き寄せたので、表情は伺えないのだが。



「…妬かなくても」



煩い、と小声だったのだろうが、胸元だからよく響く。


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