恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
ぽん、ぽんと私の頭で手を跳ねさせる目の前の男は、何が面白くないのか仏頂面で。



「悪いっていうか、私らはそういう関係だったってことでしょ。私だってそうなんだし」

「そうですねー」

「何その言い方ぁ!」



何がイケメンだ。
最近、ちょっと子供に返っていってるんじゃないの。



ぽん。


跳ねた手が私の頭で落ち着いた。
依然、目は外方を向いているのが、まだ拗ねている証拠。



ふー…。



笹倉のその様子に、私は深く溜息をつく。



「どしたのよ、パパ」



それで漸く、私に視線を戻した『パパ』



「ねー。パパすぐ拗ねるねー」

「ちょ、やめろって。聞こえたら嫌だろ」

「もー遅い」



べ、と舌を出して笑ってやったら、漸く笹倉も表情を緩ませた。



「子育てするんでしょ、一緒に」

「ん」

「じゃあ、もういいじゃん。今までのことなんて」



彼が苦笑を浮かべて、私のてっぺんの髪をかき回す。



「今からの俺は、ちゃんと見てて。大事にするから」

「わかってるよ。無責任な人じゃないのくらい知ってる」



責任と信頼。
そういった部分では、誰より信頼してると思う。


彼は、大事なものが何かちゃんと解ってる気がするから。


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