恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
今夜から、狭山と一緒に住む。
仕事帰りに、駅で落ち合う約束をしていた。


今までそれなりに彼女も居たりしたが、誰かと住まいを共にするのはこれが初めてだ。


仕事が終わって急いで着替えて私服で地下フロアに戻ると、惣菜フロアで夕食を買った。


まだ時々悪阻がぶり返すらしいから、さっぱり食べられそうなサラダを多めに。


何か作るとか言いそうだけど電車で2時間かけて来るわけだし、無理はさせられない。


自分でも若干退く。
それくらい、俺はテンション上がってた。


今日一日、時計が気になって仕方がなかった。



そんな、記念すべき日。
その、夕食後。



「藤井さんにも言われたんだよね。前に一回、スマホ借りたことあって」



とりあえず、色々聞きたいことはあるが。


狭山の口からおっさんの名前が出るだけで、いらっとする。
そんな狭小な自分を発見した。


それなのに、自分から連絡するとか言いやがるから。



「わかった。俺がしとく」



それだけ言って、一瞬だけ掠めるように唇を合わせると、彼女の頭を抱き寄せた。


今、顔を見られたくなかったから。
多分、見るに耐えん顔してる気がする。


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