恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
俺は清廉潔白だ、とまでは言うつもりはない。


『彼女』が居ない時は適当につまみ食いしたりもしたのは事実だ。
だが、彼女が思うほど無節操だったわけでは、決して無い。


が。



「実際その後も、合コン行って朝帰りだとか、しょっちゅうやってたでしょ」



…ぐぅの音も出ない、とはこのことか。


狭山との関係が曖昧なままずるずると継続して、それならそれでとつい羽目を外したことも…確かで。


そこまで頭の中でごちゃごちゃ考えて、結局凹んだ。


自業自得。それだけだ。


腕の中の彼女を解放し、その頭でぽんぽん、と掌を跳ねさせてバツの悪さを誤魔化した。



「…そうデスネ、俺の行いが悪いんです、スミマセンデシタ」

「悪いっていうか、私らはそういう関係だったってことでしょ。私だってそうなんだし」

「そうですねー」

「何その言い方ぁ!」



呆れたような彼女の声に、ぽん、と弾む手が止まる。


狭山が深呼吸し、長い溜息をついてから、言った。



「どしたのよ、パパ」



――――…… パパ。


うぉ。
やばい。


ちょっとときめいた。


初めての呼ばれ方に、どうしようもなく頬が緩みかけた。


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