恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
夜、ベッドで狭山を背中から腕に収めて、久々の彼女の匂いに当然ながらムラムラする。


いやいや。


妊娠してても出来るらしいってことは聞いたけど、今日は移動で疲れただろうし。


触ればわかる程度にふっくらしてきた彼女のお腹を撫でて自分に言い聞かせる。


くぁ、と彼女が欠伸を噛み殺した気配がした。



「眠い?」



少し頭を上げて彼女の顔を覗き込みながら問いかける。



「うん、そっち向いていい?」



言いながら、腕の中でくるりと反転し胸元で深呼吸する彼女。



「人の匂いっていいな」



吐息混じりの呟きに、どくん、と反応した。


何がって。
俺の中のサルが。


俺をサル認定した張本人が、この状況で煽らないで欲しい。



「…匂いフェチ?」

「かもね」



軽口叩いてサルを紛らわしていると、背中に手を回されて余計に密着する。


やばいって。
何ヶ月禁欲してると思ってんだよ。


堪えきれずに、抱きしめる腕に力を込めようとした時だった。
眠気を含ませた、掠れたアルト。



「逃げないからね」



その一言は、ここ暫くの、俺の挙動に対するものなのだと、直ぐに悟って息を飲んだ。

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