恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
◇
「狭山さん、退職しなさいな」
この時間、休憩室は人が少ない。
落ち着いて話をするには、事務所よりも此処の方が都合が良かった。
そこで、言われたくはなかった言葉を発したのは一条さんではなく、店長だった。
正面で腕組するその表情は、怒っているようには感じなかったのだが。
出た言葉は容赦ないもので。
「…ですよね、ほんとすみません。折角、新店の店長のお話戴いたのに無下にして、時期早々な産休までいただいてるのに」
産休後、今の百貨店ではなく実家近くの新店にと希望を申し立てたのは年末の話。
それを今度は結婚するから、やはり此処かこの近場で働きたいなんて。
迷惑に思われることはわかっていたのだが。
真剣に退職を勧められて、流石にへらへらとは笑えなくなり、俯いて小さく頭を下げた。
「あー…違うのよ、嫌な意味じゃなくてね」
少し慌てた店長が片手を振って否定し、退職を勧めた理由を話してくれた。
「子供出来たら、少し時間減らしたいんでしょう。だったら、退職して契約販売員で登録した方が、時間も曜日も融通利くし、配属される地域も希望通りになるって事」
「狭山さん、退職しなさいな」
この時間、休憩室は人が少ない。
落ち着いて話をするには、事務所よりも此処の方が都合が良かった。
そこで、言われたくはなかった言葉を発したのは一条さんではなく、店長だった。
正面で腕組するその表情は、怒っているようには感じなかったのだが。
出た言葉は容赦ないもので。
「…ですよね、ほんとすみません。折角、新店の店長のお話戴いたのに無下にして、時期早々な産休までいただいてるのに」
産休後、今の百貨店ではなく実家近くの新店にと希望を申し立てたのは年末の話。
それを今度は結婚するから、やはり此処かこの近場で働きたいなんて。
迷惑に思われることはわかっていたのだが。
真剣に退職を勧められて、流石にへらへらとは笑えなくなり、俯いて小さく頭を下げた。
「あー…違うのよ、嫌な意味じゃなくてね」
少し慌てた店長が片手を振って否定し、退職を勧めた理由を話してくれた。
「子供出来たら、少し時間減らしたいんでしょう。だったら、退職して契約販売員で登録した方が、時間も曜日も融通利くし、配属される地域も希望通りになるって事」