恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「って、考えてくれてたのは一条君だけどね」



店長の隣で、黙っていた一条さんが軽く肩を竦めた。



「子供産むって聞いた時からその方がいいんじゃないかと思ってたんですよ。保育所や小学校に入ったら行事もありますしね。

 パートよりは優遇されるしね。結婚されるんなら、正社員にこだわらなくても良いんじゃないかな」



個人の都合で振り回しているのにそこまで考えていてくれたのかと、余りに申し訳なくて。



「ご迷惑ばっかりかけたのに、ありがとうございます」



笑顔、超コワイとかばっかり思っててすみません。
余計なことは言わずにおいて、テーブルに額がくっつくくらいお辞儀をした。



「管轄内の販売員が、良い環境で働けるように上と交渉するのも僕の仕事だから。ただ、これ以上の予定変更はもう聞かないよ。愛想つかされて破談にならないようにね」



言葉尻の笑顔はやっぱり黒かった。
気をつけます、と頬を引きつらせながらも笑顔で答えると、店長から思いもよらぬ事を聞く。



「ってか、狭山さん、お相手ってやっぱり藤井さん?」

「はっ?」

「あなた、一時噂流れてたじゃない。年末頃に更に尾ひれついて面白いことになってたわよ」


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