恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「それ聞くと、うちの店長はほんとよく働くなぁ。うちは副店いないから全部店長がやってるよ」


うちは、売場面積が狭い為か、元々販売員の数は長期のパートさん含めて4人だけ。


繁忙期だけ臨時のパートさんが入ってくる。
だから副店という立場の人間は居ないのだ。


暗黙の了解のような形だが店長の居ない時の代理は私となっているが、単に此処での売場経験が長いからというだけのことだ。



「そうですよねぇ。こないだ、誰がやっても問題ない内容の仕事あったら指示してもらって構わないですよって聞いてみたんです。」



カナちゃんは、仕事にとてもハングリーだ。出来る仕事はないか、常に探していて新しく覚える内容にも積極的に向かっていく。



「そしたら、面倒なことは私がやるから、若い子はもっと販売力つけなさぁい。って言われちゃいました」



店長のモノマネ口調で話すから、ちょっとおかしくて笑った。



「うちの店長とトレードしてくんない」



笹倉が言うから冗談に聞こえないが。
残念ながらそんなシステム、ない。


その後は皆で、この仕事くらいは手が空いてる人でいいんじゃない、とか。
うちはこうしてるよとか。なんでその店長はそんなに仕事しないのかとか。


事務作業についてそれぞれに話していたけど最終的に恵美が言った。


「ようは瑛人君、店長にいじめられてるってことじゃない?」

「ちょ、恵美さん。いじめられてる人にそれ指摘したらダメですよ、気づいたら傷つくじゃないですか!」



カナちゃんが笑いながら突っ込んだ。


「お前らホント酷い」


この人、本日の主役。
なんだか今日はいじられ役が定着している。
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