恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
一頻り盛り上がって、それぞれ隣りだったり向かいだったり、別れて話し始めた頃。
私はカナちゃんと話していたのだが、



「ほんとに笹倉さんとは付き合ってないんですかぁ?」



自分の目の前に笹倉がいるというのにお構いなしに聞いてきた。
酒が入ると女子の会話はおのずと恋愛風味になりがちだ。


大変めんどくさい。


「カナちゃん、二人が苗字で呼び合うから余計あやしーっていうのよ」


反対隣から恵美がいう。


「私が苗字で呼ぶの、別に笹倉だけじゃないけど」


軽く肩をすくめて躱すけど、カナちゃんは納得がいかない様子。


「じゃ、笹倉さんは?なんで美里さんだけ苗字なんですかぁ!」


身体を乗り出す勢いに、笹倉は人差し指をくるくるとかざしながら、言った。


「えー……と、なんだっけ?名前」

「は?」

「苗字。覚えてねぇ。狭山がカナちゃんて呼ぶから苗字頭に残ってない。そんだけ」

「ひど!」


そんなわけない。さっきいじられた仕返しだろう。
大人気なくけらけら笑ってる。


「でもでも、絶対、なんか怪しい、なんか、こう」


ぶつぶつ言いながら、唸るカナちゃんを見て私も笑ってた。


「しつけぇな。美里、そこの鶏唐ちょうだい」


油断してたから、思わず固まった。
< 37 / 398 >

この作品をシェア

pagetop